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"yarım" (やるむ) とはトルコ語で はんぶん の意味。  İstanbul と Tokyo 半々生活のふたりのおはなし。
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優しい罠
私にはイスタンブルに日本人の知り合いが何人かいるが、
Kさん(女性)もその中の一人だった。
トルコ旅行中ひょんなことで知り合い、メールのやり取りをしたり、
トルコ訪問の際にはたまに会ったりしていた。彼女はおそらく40台後半から
50歳位だと思うが、独身でイスタンブルにひとりで暮らしていた。


タイランと結婚が決まり報告をしたところKさんから誘われ、
イスティクラール通りの裏路地で、3人で食事をした事があった。

もう10年以上イスタンブルに暮らすKさんとタイランは、
マニアックな話題で盛り上がっていた。
Kさんは日本語で私に、

「トルコ人と結婚するって言うから、ちょっと心配してたのよ。でも良かったわ。
彼だったら安心ね。そこらへんの無教養なゴロツキ男なんかに
ひっかかっちゃったら、それこそ人生台無しよ。
私はそういう日本人女性を何人も見て来たの」


 「そうなんですか・・・」

「差別して酷いって思うでしょ?でもそうなのよ。トルコは階級社会。
そこらへんははっきりしてるの。女の価値はダンナで決まっちゃうのよ」


タイランの煙草から貰い火をし、煙を吐き出しながらKさんはため息をついた。

「探せばまだいるのね~彼みたいな優良物件の独身男が!(笑)」

私は苦笑いするしかなかった。




「何話してるの?」

タイランが私に尋ねると、Kさんは「うふふ。ヒミツ!女同士の話よ」と、
タイランの肩に触れた。

「ずるいなぁ。日本語で話すなんて(笑)」

「あら~でもトルコ人だって、日本人がトルコ語わかんないと思って悪口言ってるでしょ?
私がトルコ語で反論したら、みんな驚いた顔して!おかしいったらないわよ!(笑)」


「あれ?じゃあ、僕、悪口言われてるのかな?(笑)」

「違うわよ!あなたがサイコーだって言ってたのよね!」

 「・・・うん。そうよ(^^;」

Kさんは、いつになく上機嫌だった。



そして、帰国後・・・

「ジェイダ、Kさんと連絡取ってる?」

 「ううん。あれから取ってないけど、どうして?」

「実は・・・・」

タイランの口から、恐ろしい真実が告げられた。
私が帰国してから、タイランのところにKさんから連絡があり、私のことで
話したいことがあるからと、自宅に(!!)呼び出されたのだそう。
不審に思いながらも行ってみると、Kさんがタイランに、
私との結婚は止めた方がいいと言って来たのだという。

「彼女は日本とトルコに男がいて、何股もかけている。
日本語で話していたとき、実は、そのことの口止めをされたのだ」と。

彼女のために黙っておこうと思ったが、あなたはいい人だと思うから、
騙されてはかわいそう。
だから結婚してしまう前に全てを話すことにした。
そして、私がトルコで付き合っている男だとして、あるトルコ男性の写真を
見せられたんだそう。

「若い・・・多分24、5歳だと思う。金髪碧眼のなかなかのいい男だったよ(笑)」

そしてKさんは、タイランをベッドへ誘って来たのだそうだ。

 「タイラン、まさか・・・」

「öööööffffff!yok yaaaa aşkım :( (とんでもない!)」

ホッと胸をなでおろす。

 「それで・・・タイランはKさんの話、信じたの?」

「信じるわけないだろ~?いくら日本語が解らなくても、雰囲気でそんなことを
話してはいない位は
察しがつくさ。彼女が目論んでいる事もね(笑)。
それに万が一君が浮気をするとしたら、誰にも言わないでコッソリするだろうな(笑)
少なくとも、ヒミツを握られた人と僕を会わせるメリットが見つからないよ」


 「そうだね(笑)」

「だから言ってやったんだ。『実は僕も彼女以外に何股もかけてるんです。
だから、お互い様なんですよ。それに僕は年下が大好きなので、
本命は21歳なんです。でもジェイダがかわいそうだから
結婚してあげるんですよ。内緒ですけどね』って(笑)」


そんなふうに言われたら、少なくともその倍は年をとっているだろうKさんは、
何も出来なくなるだろう。

しかし・・・トルコでトルコ人に騙されるんじゃなく、同胞に騙されると言うか、
こんなふうに陥れられるとは。
怒りと言うより、やり切れない。切ない。

タイランも内心は結構怒っていたが、私たちはKさんのことは忘れる事にした。
幸いそれ以来、彼女からは何の連絡もない。




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by bizim | 2007-01-24 00:00 | 出会い ~ 結婚まで
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